外国人技能実習生を受け入れる企業にとって、給与の設定はとても重要なテーマです。給与は最低賃金法や同一労働同一賃金の原則に従う必要があり、違反すると行政指導や受け入れ停止といったリスクにつながります。

この記事では、技能実習生の給与相場、適切な賃金設定のポイント、保険や税金の仕組みまで詳しく解説します。

技能実習生に支払う給与の相場

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」のデータによると、技能実習生の給与相場は182,700円となっています。

その他の在留資格との比較は、以下の表の通りです。

在留資格賃金(月額)前年比
専門的・技術的分野(特定技能を除く)292,000円-1.6%
特定技能211,200円6.7%
身分に基づくもの300,300円13.4%
技能実習182,700円0.6%
その他(特定活動および留学以外の資格外活動)226,500円-2.1%
外国人労働者平均242,700円4.3%

外国人労働者全体の平均と比較すると6万円下回る賃金ですが、前年からは0.6%の微増となっています。2025年には全都道府県の最低賃金が1,000円を上回ったこともあり、来年度以降の賃金相場は上がることが期待できるでしょう。

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技能実習生の給与を適切に設定するためのポイント

技能実習生の給与を設定する際は、最低賃金を守るだけでなく、労働基準法や関連制度を踏まえて適切に決める必要があります。以下で重要なポイントを解説します。

最低賃金法を適用する

技能実習生も日本人労働者と同様に最低賃金法の対象です。地域別最低賃金を下回る給与は違法となり、労働基準監督署からの是正指導やペナルティの対象になります。

例えば、2025年の大阪府の最低賃金は1,177円です。月160時間働いた場合、月収18万8,320円 が最低ラインとなります。受け入れ企業は都道府県ごとの最低賃金を確認し、必ず遵守しなければなりません。

関連記事▶︎外国人労働者の最低賃金は?注意したい点や平均賃金、税金との関係を解説

同一労働同一賃金を遵守する

技能実習生が日本人と同じ業務を行う場合、給与や待遇に不合理な格差を設けてはいけません。厚生労働省は「同一労働同一賃金ガイドライン」で、基本給・手当・賞与などを同じ基準で支払うよう求めています。

同一労働同一賃金には法的な罰則こそありませんが、賃金格差の理由が合理的に説明できない場合、訴訟リスクや損害賠償請求を受ける可能性もあります。

特に、住宅手当や通勤手当などの福利厚生を技能実習生にだけ支給しないケースはトラブルにつながります。給与格差が原因で不満がつのり、離職や失踪のリスクも高まります。

時間外労働や休日出勤の手当も支払う

技能実習生に残業や休日出勤をさせる場合、日本人と同様に割増賃金を支払う義務があります。

労働基準法では、時間外労働に対しては25%以上、深夜労働(22時〜5時)は25%以上、休日労働は35%以上の割増率で賃金を支払うことが定められています。

たとえば、時給1,000円で1時間残業した場合は1,250円、深夜労働なら1,250円、休日労働であれば1,350円を支給する必要があります。

これらを怠ると違法労働と見なされ、労働基準監督署の指導や受け入れ停止、監理団体からの改善命令につながるため、企業側には厳格な対応が求められます。

技能実習生を最低賃金で雇用するのはOK?

最低賃金を守っていれば法律上は問題ありませんが、最低ラインでの雇用にはさまざまなリスクが伴います。

特に、生活費や家族への仕送りを考慮すると実習生が満足できない給与水準になりやすく、結果的に不満の蓄積や離職といったトラブルに発展する可能性があります。

ここからは、最低賃金水準で雇用することで実際に起こりうるリスクについて詳しく見ていきましょう。

リスク①技能実習生の失踪

最低賃金だけの給与では生活が苦しく、実習生が不満を抱えて失踪するケースが増えています。

2024年9月に報じられたNHKの調査では、 7,000人以上の技能実習生が失踪しており、その理由の多くは転籍が認められていないことでした。

技能実習生は転籍が認められていないため、低賃金をはじめ、暴言や長時間労働などといった不満があっても逃げ道がありません。

最低賃金での雇用は、金銭的な負担だけでなく、職場での待遇への不満にもつながりやすく、失踪の一因となりかねないというリスクが大きくなります。

リスク②他社への転職

技能実習制度自体は原則転職できない仕組みですが、特定技能など他の在留資格への移行後は労働者としての権利が広がり、企業間での転職が可能になります。そのため、待遇が悪い企業は離職・転職されるリスクが高まります。

優秀な人材ほど待遇の良い企業に流れる傾向があり、最低賃金ギリギリで雇用していると人材確保が難しくなるだけでなく、育てあげた貴重な戦力を他社に流出させてしまうという痛手にもなりかねません。

関連記事▶︎特定技能とは?制度の概要や1号・2号の違い、対象分野について
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技能実習生に対する賞与について

技能実習生に賞与(ボーナス)を支給することは法律上の義務ではなく、労働基準法などにも明確な記載はありません。そのため、賞与の有無や金額は基本的に企業の判断に委ねられます。

ただし、同一労働同一賃金の原則に基づき、日本人従業員に賞与を支給している場合には、同等の業務を行う技能実習生にも同様の報酬を与えることが望ましいとされています。これは待遇格差を避けるためにも重要な配慮です。

賞与は年2回で1〜2か月分の給与を支払う企業もあり、モチベーションの向上や定着率アップに貢献しています。

技能実習生の保険・税金について

給与を支払う際には、社会保険や税金の控除を行う必要があります。技能実習生も日本人と同じく制度に加入し、義務を果たさなければなりません。

保険について

技能実習生は日本人労働者と同様に、保険制度への加入が法律で義務付けられています。これは労働者としての基本的な権利と安全を確保するためのものであり、企業側にも適切な手続きが求められます。

加入が義務付けられている保険の種類は以下の通りです。

保険の種類内容
雇用保険失業時の給付や職業訓練時の手当などが支給される制度
労災保険業務中の事故や通勤災害などに対する補償制度
健康保険医療費の一部負担や出産手当金・傷病手当金などの保障制度
厚生年金保険老後の年金受給や障害・遺族年金などを受け取るための制度

健康保険については、講習期間中は国民健康保険への加入となり、実習が始まるタイミングで健康保険(社会健康保険)へ切り替えになります。

なお、母国と日本の間に社会保障協定が結ばれている場合は、年金の二重払いを避けることが可能であり、帰国後に脱退一時金を受け取れるケースもあります。

税金について

技能実習生にも所得税と住民税の納税義務があります。

来日して1年未満の技能実習生は「非居住者」として扱われるため、所得税は所得に関わらず一律20.42%の税率で源泉徴収され、住民税はかかりません。

2年目以降の技能実習生の場合、所得税は日本人と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき源泉徴収され、住民税も日本人と同様に前年度の所得から計算されます。

ただし、所得税については、母国と日本の間に租税条約が締結されている国籍(アメリカ、韓国、タイ、インドネシアなど)の実習生であれば一定の条件を満たすことで所得税が免除されるケースもあります。

このように、実習生ごとに税制上の取り扱いが異なるため、企業は税務上の正しい知識と手続きを把握し、適切に処理することが重要です。

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まとめ

厚生労働省の調査による令和6年度の技能実習生の給与相場は182,700円でした。技能実習生の給与は、最低賃金を守るだけでなく、同一労働同一賃金や割増賃金のルールを徹底することが重要です。

また、保険や税金の控除も必要になります。最低賃金だけでの雇用は失踪や転職といったリスクがあるため、生活できる水準を意識した給与設定が求められます。

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