
深刻な人手不足が続く日本では、即戦力として働ける外国人材の需要が年々高まっています。その中でも「特定技能1号」は、一定の技能と日本語能力を持つ外国人が、16の分野で働ける制度として注目されています。
この記事では、特定技能1号の制度内容や対象分野、企業が採用する際の手続きや支援体制、成功のポイントまでを徹底的に解説します。
特定技能1号とは?
特定技能制度とは、日本国内の深刻な人手不足に対応するために2019年4月に創設された在留資格制度で、外国人が一定の技能と日本語能力を有した上で、即戦力として働くことを目的としています。
この制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、1号は比較的基礎的な技能を持つ外国人が対象で、16の指定分野で最長5年間の就労が可能です。特定技能1号は、専門的・技術的分野で一定の知識や経験を持ち、日本語でのコミュニケーションが可能な外国人が対象となります。
特定技能1号の制度が創設された背景
日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少しています。特に建設、介護、外食、宿泊業などでは慢性的な人手不足が課題となっています。これを受けて政府は、技能実習制度に続く形で即戦力となる外国人を受け入れる「特定技能制度」を創設しました。
制度発足時点では14分野でしたが、さまざまな分野で特定技能外国人を受け入れられるよう、2025年現在では16分野まで拡大しています。
対象となる16の分野と具体的な職種
特定技能1号の対象となる分野は以下の16分野です。
- 介護(介護施設での身体介護、日常生活支援など)
- ビルクリーニング(商業ビル・施設内の清掃業務)
- 工業製品製造業(金属加工、鋳造、機械組立など)
- 建設(とび・土工、電気工事、配管工事など)
- 造船・舶用工業(溶接、塗装、機械加工、艤装など)
- 自動車整備(点検整備、車検業務、部品交換など)
- 航空(空港グランドハンドリング、機体整備補助など)
- 宿泊(フロント業務、客室清掃、レストラン配膳など)
- 自動車運送業(トラック運転手、配送・集荷業務など)
- 鉄道(車両清掃、駅構内業務、保守補助作業など)
- 農業(野菜・果物の栽培、収穫、出荷作業など)
- 漁業(定置網漁業、養殖業、水産加工業など)
- 飲食料品製造業(食肉加工、パン製造、惣菜製造など)
- 外食業(調理補助、接客、食器洗浄など)
- 林業(伐採、搬出、植林、保育作業など)
- 木材産業(製材加工、合板製造、木材乾燥など)
特定技能1号の在留期間と更新上限
特定技能1号の在留期間は「3年を超えない範囲内で法務大臣が個々に指定する期間が付与されます。」で設定され、通算で最長5年まで更新可能です。更新のたびに在留資格の審査があり、労働条件や生活状況が適正であるか確認されます。
また、特定技能1号では家族の帯同は認められていないため、単身での就労が前提となります。
5年を超えて就労する場合は、上位資格である「特定技能2号」への移行が必要です。
特定技能1号と「技能実習」「特定技能2号」との違い
特定技能1号と同様、日本で労働ができる「技能実習」「特定技能2号」との違いについては下記の通りです。
| 区分 | 技能実習 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
| 目的 | 技能を「学ぶ」 | 即戦力として「働く」 | 高度な技能を活かして「定着・継続して働く」 |
| 対象の職種と業種 | 85 職種156作業 | 指定された16分野(介護、建設、外食業など) | 指定された11分野(建設・造船など) |
| 在留期間 | 原則3年(最長5年) | 最長5年(更新あり・通算5年まで) | 無期限(更新可能) |
| 人材のレベル | 初学者・未経験者 | 試験等により一定の技能・日本語力を有する者 | 熟練した技能を有する者 |
| 受け入れ可能人数 | 団体管理型や企業単独型により制限 | 業種ごとの受入見込み数に基づく(制限あり) | 制限なし(業種により異なる) |

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特定技能1号で採用するメリット
特定技能1号を活用することで、企業は即戦力となる外国人材を確保できます。ここでは具体的な3つのメリットを見ていきましょう。
人手不足を補える即戦力の確保
特定技能1号の外国人は、技能試験・日本語試験をクリアしているため、一定の知識・技術を持っています。人材不足による離職リスクを軽減できる点は大きなメリットです。
日本語力が担保されている
特定技能1号の取得には、日本語能力試験(JLPT N4以上)または日本語基礎テストの合格が必要です。現場でのコミュニケーションもスムーズで、報連相や安全指導も行いやすくなっています。特に介護や外食業など、顧客対応が求められる分野で強みを発揮します。
企業が既に技能実習生を受け入れている場合、技能実習2号を良好に修了した実習生は、上記の試験が免除されます。これは、技能実習期間中に必要な技能と日本語能力を既に身につけていると認められるためです。
技能実習よりも柔軟な雇用が可能
技能実習は原則として転職ができませんが、特定技能1号では同一分野内での転職が可能です。また、業務内容や勤務時間の設定にも柔軟性があり、フルタイム・短時間など企業のニーズに合わせた雇用形態を取ることができます。
さらに、特定技能1号では監理団体を通す必要がなく、企業が直接雇用できる点も大きなメリットです。これにより、雇用主と外国人との意思疎通がよりスムーズになり、現場に即した人材配置が可能になります。
特定技能1号で採用するデメリット
一方で、特定技能1号には企業側に一定の負担や制約もあります。ここでは主なデメリットを整理します。
在留期間は最長5年まで
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限です。5年経過後は帰国するか、特定技能2号へ移行する必要があります。長期雇用を見込む場合には、キャリアプランを見据えた採用戦略が欠かせません。
受入企業に課される生活支援義務
企業は、外国人が日本で円滑に生活できるよう「生活支援義務」を負います。具体的には、住居の確保や行政手続きの補助、日本語学習の支援、相談対応などが含まれます。ただしこれらは「登録支援機関」に委託することも可能です。
入管申請など煩雑な手続きが必要
特定技能1号の受け入れには、入管への「在留資格認定証明書」交付申請など、複雑な手続きが必要です。書類不備や要件不足で不許可となるケースもあるため、専門知識を持つ登録支援機関や行政書士のサポートを受けるのが安心です。

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特定技能1号の採用までの流れ
特定技能1号を採用するまでの流れとして、ステップは大きく4つに分けられます。
採用計画と受入体制の準備
まず、企業は自社が受け入れ可能な業種・業務内容・施設・事業形態に該当するかを確認する必要があります。
そのうえで、「受入れ基準要件」「雇用契約の要件」「雇用後の義務」という3つのポイントについて、自社が満たしているかを事前にチェックすることが重要です。
- 受入れ基準要件:特定技能制度で外国人を受け入れるには、業種・業務内容が対象分野に該当し、かつ適切な施設・事業形態である必要があります。また、過去に不法就労を助長する行為がないこと、適切な労務管理体制が整っていることも要件です。
- 雇用契約の要件:外国人と締結する雇用契約は、労働基準法など国内法に準拠していることが前提です。賃金、労働時間、休暇、安全衛生、社会保険加入などが明記され、同等業務に従事する日本人と同等以上の待遇である必要があります。
- 雇用後の義務:受け入れ企業は、外国人の就労および生活に関する支援を行う義務があります。これには、入国時の空港出迎え、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談対応などが含まれ、これらは登録支援機関に委託することも可能です。
加えて、外国人材の業務範囲や支援体制を明確化し、労働条件通知書や就業規則の整備、日本人従業員への説明など、社内体制の整備も欠かせません。
特定技能人材の募集・確保
候補者は、海外または国内(元技能実習生など)から募集します。送出機関や登録支援機関を通じてマッチングするのが一般的で、特定技能評価試験の合格証明を確認することが必要です。
在留資格「特定技能1号」の申請
採用が決定したら、入国管理局へ在留資格認定証明書交付申請を行います。必要書類は、雇用契約書・支援計画書・資格証明など多岐にわたります。申請から許可までは約1〜3ヵ月が目安です。
就労開始・就労後の支援と定着支援
在留資格が許可されると、入国・就労開始となります。就労後は生活支援・日本語教育・定期面談などを通じて定着支援を行います。これらの支援は法律上の義務ではありますが、義務だからという理由だけでなく、外国人材が安心して働ける環境を整えることが、結果的に職場への定着とパフォーマンス向上につながります。
現場の体制づくりや日本人スタッフの理解促進もあわせて行うことで、早期離職のリスクを軽減できます。そのためにも、受け入れ企業と支援機関の連携が欠かせません。
特定技能外国人の雇用を成功させるためのポイント
特定技能制度を活用する際は、単なる人材確保にとどまらず、長期的な定着を見据えた支援体制づくりがカギとなります。
文化や習慣の違いを理解する職場環境
外国人が働きやすい職場づくりには、文化・宗教・生活習慣の違いを尊重する姿勢が大切です。例えば、食事や休日の取り方、宗教上の配慮などを理解することで、離職率を下げられます。
専門知識を持つ登録支援機関の活用
登録支援機関は、特定技能外国人の生活支援や手続き代行を行う専門機関です。制度に詳しい担当者が、書類作成から行政手続きまでサポートしてくれるため、企業の負担を大幅に軽減できます。
登録支援機関が代行できる支援業務
主な支援内容には、住居確保、日本語教育、生活オリエンテーション、相談窓口の設置などがあります。法令では「10項目の支援業務」が定められていますが、すべてを企業が単独で実施する必要はなく登録支援機関のサポートを受けて進めることが可能です。
自社対応と外部サポートの違い
自社で支援業務を行う場合、担当者の負担が大きくなりがちです。特に外国語対応や行政手続きには専門知識が求められます。一方で、登録支援機関に委託すれば、専門スタッフが全ての支援を代行してくれるため、安心して雇用に専念できます。
専門サービスを利用するメリット
専門機関を活用することで、法令違反や申請ミスのリスクを防ぎ、スムーズな受け入れが可能になります。さらに、外国人本人にとっても生活面の安心感が増し、長期的な定着につながります。

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まとめ
特定技能1号は、日本の労働市場において即戦力となる外国人を受け入れる重要な制度です。採用には一定の手続きと支援体制が求められますが、登録支援機関を活用すれば負担を大幅に軽減できます。
今後ますます多様化する労働環境の中で、制度を正しく理解し、文化を尊重した受け入れを行うことが、持続可能な人材確保の第一歩です。
特定技能外国人の雇用をお考えの事業者さまは、どうぞお気軽にアイデムまでご相談ください。

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