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2024年、入管法に大きな改正があり、話題になりました。
入管法は、日本における入国・出国管理や在留資格、難民認定に関して定めている法律であり、日本に入国する外国人にとって重要な法律です。
そんな入管法は公布されてから何度も改正がおこなわれています。本記事では、これまで入管法にどのような改正がされてきたのか、その主要な歴史をわかりやすく解説します。
入管法(出入国管理及び難民認定法)とは?
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、日本国内への入国・出国管理や在留資格、難民認定に関して定められている法律です。
入管法は1951年に、「出入国管理法」として初めて公布されました。その後、複数回の改正を経て在留資格制度や難民保護制度、技能実習・特定技能などの外国人就労制度が整備され、現在の形になりました。
入管法は外国人に適用される法律というイメージが強いですが、実は日本人にも一部適用される部分があります。例えば外国人を雇用したり、受け入れたりする場合や、出入国の手続きをする場合などは、日本人がおこなう行為に対しても法的責任を課す規定があります。

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入管法改正の主要な歴史
以下は、公布から現在までにおこなわれた入管法の改正のうち主要なものをまとめた表です。
| 改正年 | 改正内容 |
| 1990年 | 在留資格を27種類に整理在留資格「定住者」の創設 |
| 1998年 | 外国人の上陸拒否事由に「暴力団員であること」を追加不法入国や資格外活動で退去強制を受けた外国人の上陸拒否期間を5年に延長 |
| 2004年 | 在留資格取消制度の創設「出国命令制度」の創設 |
| 2009年 | 「技能実習」が独立した在留資格として確立一部の職種で、技能実習期間が最長3年から最長5年に延長 |
| 2012年 | 中長期在留者に「在留カード」が交付される新在留管理制度の施行最長在留期間が3年から5年に延長「みなし再入国許可」制度の整備 |
| 2014年 | 「高度人材ポイント制」の法制化新しい在留資格「高度専門職1号・2号」の創設 |
| 2016年 | 新しい在留資格「介護」の創設「技能実習」の対象職種に介護を追加 |
| 2019年 | 新しい在留資格「特定技能」の創設単純労働が認められ、より幅広い業務への従事が可能に |
| 2021年 | 「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」の提出、及び取り下げ |
| 2023年 | 「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」の一部を緩和した改正案の成立(主要な9つの改正) |
| 2024年 | 「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律(令和6年法律第59号)」「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)」の成立・公布(主要な4つの改正) |
改正年ごとに、改正内容の詳細も解説していきます。
1990年の入管法改正の詳細
1990年の入管法改正では、従来の複雑な枠組みを見直し在留資格を27種類に整理することで、活動内容ごとの区分が明確になりました。この改正は、現在の在留資格制度の基礎が確立された大きな転換点でした。
「定住者」の在留資格が新設された点も大きな特徴です。日系人やその家族、特別な事情を抱える外国人などが、より柔軟な条件で日本に滞在・就労できるようになりました。
1998年の入管法改正の詳細
1998年の入管法改正では、上陸拒否事由に「暴力団員であること」が新たに加わり、入国審査が厳格になりました。
さらに、過去に不法入国や資格外活動で退去強制処分を受けた外国人に対して、上陸拒否期間を変更する改正もおこなわれています。従来は1年間の上陸拒否でしたが、改正により5年に延長され、不法行為を働いた外国人の再入国抑止を強化しています。
2004年の入管法改正の詳細
2004年の入管法改正では、在留資格取消制度が新設されました。これは、虚偽の申請や資格外活動などの不正行為があった場合に、在留資格を取り消せる仕組みです。
また「出国命令制度」が新設されたことで、自ら出頭した不法滞在者や在留資格取消者の身柄を拘束することなく出国を命じることができるようになりました。これにより速やかな対処が可能となり、退去強制の手続きが効率化されています。
2009年の入管法改正の詳細
2009年の入管法改正では、「技能実習」が正式に独立した在留資格となりました。これにより、今までの研修制度とは別に、明確な在留目的と法的根拠を持つ制度として運用されるようになりました。これにより、技能実習生の法的地位が安定しています。
さらに、一部の職種における技能実習の期間も見直され、従来の最長3年から最長5年まで延長が可能となりました。その結果、より高度な技能習得が期待され、受け入れ企業や実習生双方にとって、実務経験を十分に積める環境が整備されました。長期滞在が可能になることで、実習の成果を現場で活かしやすくなった点も重要です。
2012年の入管法改正の詳細
2012年の入管法改正では、外国人の登録制度が廃止され、中長期在留者向けの新たな在留管理制度が施行されました。この改正によって、中長期在留者には氏名や在留資格、在留期間などが一目で確認できる「在留カード」が交付されるようになり、外国人の身分確認や行政手続きが効率化されました。
また、在留期間の上限も見直されています。一部の在留資格について、最長在留期間が従来の3年から5年に延長され、長期的な滞在・就労や学習計画が立てやすくなりました。その結果、生活や職業上の安定が図られるようになっています。
さらに、「みなし再入国許可」制度が整備されました。これにより在留者は再入国許可を個別に取得しなくても、出国から一定期間内であれば再入国が可能となっています。短期の海外出張や帰省の際の手続きが簡略化され、在留者の利便性が向上しました。
2014年の入管法改正の詳細
2014年の入管法改正では、高度人材の受け入れ促進を目的とした制度が法制化されました。まず、「高度人材ポイント制」が正式に導入され、学歴や職歴、年収、日本語能力などの条件に応じてポイントを付与し、一定以上の得点を得た外国人が優遇措置を受けられる仕組みが整えられました。これにより、優秀な外国人材の日本への誘致が制度的に可能となりました。
さらに、新しい在留資格として「高度専門職1号・2号」が創設されました。高度専門職1号は、研究者や技術者、経営・管理者などの専門的分野で活躍する外国人を対象とし、在留期間や活動範囲で一定の優遇措置が与えられます。高度専門職2号は、1号で一定条件を満たした場合に永住許可が容易になるなど、長期的な日本滞在とキャリア形成を支援する内容となっています。
2014年改正は、優秀な外国人材の確保と日本の国際競争力強化を目的とした、戦略的な入管制度の大きな転換点として位置付けられます。
2016年の入管法改正の詳細
2016年の入管法改正では、介護分野での外国人受け入れ体制が大きく拡充されました。まず、新しい在留資格として「介護」が創設され、介護福祉士資格を有する外国人が、日本国内で専門職として働けるようになりました。これにより、高齢化社会において深刻化した人手不足への対応と、介護分野での専門人材の確保が前進しました。
また、「技能実習」の対象職種に介護が追加され、外国人実習生が日本の介護技術を学び、自国で活かせる枠組みが整いました。
2019年の入管法改正の詳細
2019年の入管法改正では、日本の人口減少と人手不足に対応するため、新しい在留資格「特定技能」が創設されました。
従来の制度では、外国人が従事できる業務は高度専門職や特定の技能を要する分野に限られていましたが、特定技能の導入により、一定の技能と日本語能力を持つ外国人が単純労働をはじめとする多様な業務に取り組めるようになっています。
現場作業や接客業務など、人手を要する業務で外国人労働者を受け入れられるようになり、労働力不足問題の改善につながっています。
2021年の入管法改正の詳細
2021年には、入管法の一部を改正する法律案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案)が国会に提出されました。内容としては難民申請者の強制送還を認め、不法に滞在する外国人の帰国を徹底させるものでしたが、本来保護されるべき難民まで強制送還される恐れがあるとして強い批判を受けました。
加えて審議中、名古屋の入管施設にいたスリランカ人女性が、適切な医療を受けられなかったことにより亡くなった事件が起こり、世論の反発が強まりました。この結果、政府は法案を取り下げる判断をしています。
2023年の入管法改正の詳細
2023年の入管法改正では、2021年の法律案(出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案)を一部緩和したものが国会に提出され、6月9日に成立、6月16日に公布されました。
新しい法律案の正式名称は「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者などの出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律」です。
これには主に9つの改正点が含まれています。
- 16歳未満の外国人の在留カード等における有効期間更新申請の見直し
- 保護が必要な人を「補完的保護対象者」として認定する制度の創設
- 特別許可を申請できる手続きや判断基準を明確化し、在留特別許可制度を適正化
- 難民認定申請中でも一定条件下で送還を可能にする、送還停止効の例外規定の創設
- 送還が困難な人に関して、送還妨害などをした場合に退去を命じる罰則付き退去等命令制度の導入
- 自ら出頭・出国を選ぶ人に対して上陸拒否期間を短縮する、自発的帰国を促す措置の拡大
- 収容せず、監理人の監督下で社会内に居住しながら退去強制手続きを進めることを可能にする、監理措置制度の創設 —
- 仮放免制度を見直し、健康・人道上の理由で仮放免を求める際、医師の意見を重視するなど判断の明確化する
- 収容中の人権・処遇の質を確保する制度を強化し、適切な入管収容の処遇を実施するための規定整備
2024年の入管法改正の詳細
2024年は「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律(令和6年法律第59号)」と「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)」の2つの法律案が成立し、公布されています。
これにより主に4つの改正がおこなわれています。
- 特定技能1号並みの技能を持つ人材を育成しつつ、就労を通じて人材確保を図るべく、技能実習を段階的に終了し在留資格「育成就労」が創設される
- 特定技能制度を適正化するべく、特定技能1号外国人の支援委託先を「登録支援機関」に限る
- 転籍ブローカーを排除するべく不法就労助長罪が厳罰化され、拘禁刑が最長5年、罰金が500万円以下(併科可)に強化される
- 永住許可制度を適正化するべく、「入管法上の義務違反」「公租公課の支払いをしない」「特定の刑罰法令違反」の3つの取消事由を追加し、要件を満たさない場合の在留資格の変更を可能にする
まとめ
入管法は日本の人手不足を解消するため、そして外国人の適切な受け入れ体制を整えるため、段階的な改正がおこなわれ、現在の形になりました。しかし、まだすべての課題が解決したわけではありませんし、情勢に応じたさらなる改正も必要になるでしょう。
労働力として外国人を受け入れるのであれば、入管法の主要な内容は常に押さえておくべきと言えます。今後も動向をチェックしていきましょう。
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