目次

在留資格にはさまざまな種類があるため、「正直違いがよくわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、数ある在留資格のなかでも、在留期限や就労内容に制限がない「永住者」という資格について詳しく解説します。
また、永住者をはじめとする外国人採用のメリットについても紹介しますので、日本にずっと住み続けたいと考えている外国籍の方だけでなく、ビジネスで外国人採用を検討している方もぜひ参考にしてください。
永住者とは
永住者とは、出入国管理および難民認定法(入管法)上の在留資格の一つです。
在留期限の更新が必要ないため、原則として日本に無期限で滞在できます。また、職種や業種などの就労制限もなく、会社設立などの起業も可能です。
配偶者の場合は「永住者配偶者等」、子どもの場合は「家族滞在」など、家族も比較的スムーズに在留資格を取得できます。
永住者の権利と義務
永住者は、日本人とほぼ同等の権利・義務を負うことになるのが特徴です。
選挙権や一部公務員の就任に制限がある(国家公務員・警察官など)のを除き、ほぼ日本人同等の権利が与えられます。
ただし、それと同時に法律の遵守や納税など日本国民として果たすべき義務も課せられます。
永住権を取得するための条件
外国人が永住権を取得するためには、出入国在留管理庁が定める以下の条件を満たす必要があります。
| (1)素行が善良であること 法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること (2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること 日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。 (3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること |
引用:永住許可に関するガイドライン(令和7年10月30日改訂) | 出入国在留管理庁
素行が善良であること
永住者として認められるには、法律や法令違反を遵守していることが前提です。
繰り返し道路交通法違反をしたり、窃盗などの前科があったりする場合、永住許可申請の審査に影響する可能性があります。
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日本でずっと暮らしていくためには、一定の収入・スキルがあり、自立した生活が送れることも重要です。
具体的な年収の基準は明記されていませんが、審査では世帯全体の収入が総合的に評価されます。そのため、配偶者や子どもが働いていなくても、生活が自立していると認められれば条件を満たすことが可能です。
永住が日本国の利益になると認められること
この条件に関しては、以下ア〜エの4つの項目で構成されています。
| ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。 イ 罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。 ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。 エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。 |
参照:永住許可に関するガイドライン(令和7年10月30日改訂) | 出入国在留管理庁
一つずつ噛み砕いて説明すると、以下のとおりです。
| ア 日本に10年以上滞在しており、さらにそのうち5年間は「技能実習」と「特定技能1号(特定技能2号に移行する場合は滞在期間は含みます)」を除く就労資格、または居住資格(日本人や永住者の配偶者等、定住者)で滞在している イ 罰金刑や懲役刑などの前歴、税金の申告漏れ・未納・滞納、社会保険料の未納・滞納、各種届出の遅延などがない ウ 同じ在留資格でも、5年・3年・1年などと在留期間は人によって異なるが、そのなかでも最も長い在留期間を与えられている エ 本人が感染症にかかっていない、薬物中毒者でないなど、公衆衛生上の問題がない |
いずれも、日本で安定した生活を送る能力があり、かつ社会に悪影響を及ぼさないことを確認するための条件となっています。

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永住権の取得は特例もある
永住権の審査では、実情に応じて柔軟な判断を下すために、一定の条件を満たす場合以下の特例措置が適用されます。
- 素行と生計に関する条件の緩和
- 在留期間の緩和
素行と生計に関する条件の緩和
出入国在留管理庁は、永住権取得に関する法律上の要件に関して、以下のように補足しています。
| ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、(1)及び(2)に適合することを要しない。また、難民の認定を受けている者、補完的保護対象者の認定を受けている者又は第三国定住難民の場合には、(2)に適合することを要しない。 |
参照:永住許可に関するガイドライン(令和7年10月30日改訂) | 出入国在留管理庁
そのため永住者の配偶者・子どもであれば、2. 永住権を取得するための条件 でも説明した以下の条件を満たしていなくとも、永住許可申請が可能です。
| (1)素行が善良であること(2)独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること |
また、第三国定住難民(母国や避難先の国で生活できず、第三の国の支援が必要な難民)に関しても、(2)が免除されます。
在留期間の緩和
原則、永住許可申請が認められるのは、日本での在留期間が10年以上の場合です。
しかし、出入国在留管理庁ではその緩和措置として、「原則10年在留に関する特例」を以下のように定めています。
| (1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること (2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること (3)難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していること (4)外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で、5年以上本邦に在留していること (5)地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い、当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合、3年以上継続して本邦に在留していること (6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。) に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有しており、かつ特定の条件を満たす者 (7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有しており、かつ特定の条件を満たす者 (8)特別高度人材の基準を定める省令(以下「特別高度人材省令」という。)に規定する基準に該当し、かつ特定の条件を満たす者 |
参照:永住許可に関するガイドライン(令和7年10月30日改訂) | 出入国在留管理庁
※(6)〜(8)の特定の条件に関しては上記URLを参照
具体的には以下の条件に該当する場合、日本での在留期間が10年未満でも永住許可の申請が可能となります。
- 日本人・永住者・特別永住者の配偶者であり、実体をともなう婚姻生活が3年以上継続しており、かつ1年以上継続して日本に滞在している場合
- 日本人・永住者・特別永住者の子どもであり、1年以上継続して日本に滞在している場合
- 在留資格「定住者」を取得しており、5年以上継続して日本に滞在している場合
- 外交・社会・経済・文化などの分野で日本に貢献していると認められており、5年以上継続して日本に滞在している場合
(6)〜(8)に関しては、個別の事情を考慮するためにさらに細かい条件が設定されています。詳しくは、出入国在留管理庁による「永住許可に関するガイドライン」でご確認ください。
他の在留資格との違い
日本国内で長期滞在するには、永住者以外にもさまざまな在留資格や身分・地位があります。
そこで、ここからは永住者と以下の在留資格、身分・地位の違いを解説します。
- 特別永住者
- 帰化
- 定住者
- 特定技能
在留資格の種類やそれぞれの概要、取得方法に関しては以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
>>在留資格とは?全29種類の概要やビザとの違い、取得の方法などについて解説
特別永住者
特別永住者とは、1991年に制定された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」(入管特例法)に基づく永住資格です。
主に、第二次世界大戦時に、朝鮮半島や台湾から移住してきた人々やその子孫が該当します。
日本人とほぼ同等の権利・義務が得られる点は、永住者と共通です。ただし、その歴史的な背景から、強制退去や再入国の面で優遇されているという特徴があります。
また、特別永住者は在留資格ではなく、入管特例法に基づく特別な身分・地位として位置付けられています。そのため特別永住者には在留カードではなく、その法的な地位を証明する「特別永住者証明書」が交付されます。
帰化
帰化とは、国籍法に基づき、日本国籍を取得して日本人になることです。
永住者の場合、国籍は母国のままですが、帰化する場合は国籍が日本になります。
簡単に説明すると、日本でずっと暮らせる外国人として生きるか、日本人として生きるかが両者の違いです。帰化すると日本人として扱われるため、在留資格は不要となり、参政権も得られます。
ただし、永住者として認められるのに永住許可申請が必要なのと同様、帰化も一定の要件を満たしたうえで帰化申請をおこなう必要があります。
定住者
定住者とは、特別な理由を考慮して、一定期間の居住を認める在留資格です。
主に、日系人(日本に血縁を持つ外国籍の人)やその配偶者、中国残留邦人(第二次世界大戦の終戦後、中国に取り残された日本人またはその子孫)やその配偶者、第三国定住難民(母国や避難先の国で生活できず、第三の国が支援が必要な難民)などが該当します。
永住者と同様、就労活動の制限はありませんが、在留期間は6ヵ月、1年、3年、5年の4種類のなかから個々に指定されます。それを過ぎて日本に留まる場合は在留資格の更新手続きが必要です。
定住者の概要や要件については、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
>>在留資格「定住者」とは?永住者との違いや要件、就労制限について解説
特定技能
特定技能とは、日本国内で人手不足とされる介護や建設業などの16分野で就労が可能な在留資格です。「特定技能1号」と、1号より高い技能レベル・日本語能力を有する人が取得できる「特定技能2号」があります。
特定技能2号は、永住者と同様在留期限の上限はありません。ただし、個人の状況に応じて、3年・2年・1年・6ヵ月ごとに更新が必要となります。
一方、特定技能1号の在留期間は、個人の状況に応じて最大5年、3年を超えない範囲内で法務大臣が個々に指定する期間が付与されます。
特定技能の概要や1号・2号の違い、就労可能な分野については以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
>>特定技能とは?制度の概要や1号・2号の違い、対象分野について
永住権の申請手続き
永住権を得るには、「永住権を取得するための条件」を満たしたうえで、永住許可申請をおこなう必要があります。
ここからは、永住許可申請に関する以下の項目について解説します。
- 申請者
- 申請先
- 申請期限
- 必要書類
- 審査期間
- 手数料
申請者
永住許可申請は、原則として資格の取得を希望する本人がおこないます。
また、申請人の法定代理人や取次者(地方出入国在留管理局長から承認を受けており、申請人から依頼を受けた者)も可能です。
さらに、申請者が16歳未満または病気などの理由で自ら出頭できない場合は、親族や同居者の申請も認められる場合があります。
取次者に該当する人物や、親族・同居人の申請が認められる条件に関しては、出入国在留管理庁の公式ホームページでご確認ください。
申請先
永住許可申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署でおこないます。
不明点がある場合は(地方出入国在留管理官署又は外国人在留総合インフォメーションセンター(0570-013904)に問い合わせましょう。
地方出入国在留管理官署の受付時間は、平日午前9時〜12時、午後1時〜午後4時です。
申請期限
申請期限は、他の在留資格から永住者への変更を希望する場合、在留期間が満了する日以前までです。
一方、永住者の子として出生した場合など、新たに取得を希望する場合は、出生などの事由が発生してから30日以内が期限となります。
永住許可申請中に在留期間が過ぎてしまう場合、在留期間の満了日前までに別途「在留期間更新許可申請」をおこなう必要があります。
必要書類
永住許可申請に必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 永住許可申請書
- 永住許可を必要とする理由所
- 申請人を含む家族全員の住民票
- 在籍証明書
- 住民票の課税(または非課税)証明書
- 通帳の写し
- 納税証明書
- 国民年金保険料領収書の写し
- 健康保険被保険証・国民健康保険被保険者証の写し
- 国民保険料(税)納付証明書
- 国民健康保険料(税)領収証書の写し
- 健康保険・厚生年金保険料領収書(写し)
- 社会保険料納付証明書又は社会保険料納入確認(申請)書
- 預貯金証明書の写しまたは不動産の登記事項証明書
- 身元保証書
- 身元保証書に係る資料
- 了解書
参照:永住許可申請にかかる提出書類一覧表(概要版(就労資格))|出入国在留管理庁)
ただし、実際に必要な書類は、現在の申請人の在留資格の身分・地位によって異なります。出入国在留管理庁の公式ホームページで最新情報を確認し、自身の在留資格、身分・地位に応じた資料を用意してください。
審査期間
出入国在留管理庁の公式ホームページでは、永住許可申請の標準処理期間は4ヵ月〜6ヵ月と記載されています。
ただし、申請内容や時期によってはさらに時間がかかる可能性もあるため、余裕を持って手続きを進めることが重要です。
手数料
永住許可申請が許可された場合、手数料10,000円を収入印紙で納付する必要があります。
ただし、永住者の子として新たに在留資格を取得する場合は、手数料が免除されます。

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永住者をはじめとする外国人を採用するメリットは?
ここまで、永住者の取得要件や他の在留資格との違い、永住許可申請の手続きなどについて解説してきました。
近年、日本で働く外国人労働者数は年々増加しており、実際に「外国人を採用しているまたは採用を検討している」という企業も多く存在します。
それでは、永住者をはじめとする外国人採用には、企業にどのような利点があるのでしょうか?主なメリットは以下のとおりです。
- 人手不足を解消できる
- 採用コスト(時間・費用)を最適化できる
- 多言語での接客が可能となる
このように外国人の採用は、人手不足の解消や業務効率の向上、組織の対応力強化につながります。少子高齢化に伴う労働力不足や国際化が進む日本では、今後ますます重要な取り組みとなるでしょう。
外国人採用のメリットや注意点、雇用の流れに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
>>外国人労働者受け入れのメリットや注意点は?雇用までの流れや求人方法も
まとめ
永住者とは、原則として日本に無期限で滞在できる在留資格です。日本人とほぼ同等の権利・義務を有し、日本国籍を取得して日本人となる帰化に対して、外国籍のまま日本での永住権が得られるという特徴があります。
少子高齢化に伴う労働力不足や国際化が進む日本では、今後永住者をはじめとする外国人採用がますます重要な取り組みになると考えられます。
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