外国人労働者の受け入れを検討する企業にとって、「特定技能」と「技能実習」の違いを正しく理解することは非常に重要です。

この記事では、両制度の基本から、制度の目的や転職の可否、在留期間まで、9つの違いをわかりやすく解説。受け入れ時の注意点についても触れ、失敗しない制度選びのヒントをお届けします。

おさらい:特定技能/技能実習とは

在留資格である「特定技能」と「技能実習」は、いずれも外国人が日本で働くための制度ですが、目的や制度設計が大きく異なります。まずはそれぞれの制度の概要をおさらいしましょう。

特定技能とは

特定技能は、2019年に創設された新しい在留資格で、人手不足が深刻な産業分野に即戦力となる外国人材を受け入れるための制度です。対象は現在16分野あり、介護や建設、農業などが含まれています。

また、特定技能は1号と2号の2種類があり、それぞれ対象者や在留条件が異なります。特定技能1号は、介護や外食業など人手不足が深刻な分野において、一定の技能と日本語能力(日本語能力試験N4相当以上)を有する即戦力人材を対象としており、在留期間は通算で最長5年間です。

一方、特定技能2号は、建設や造船・舶用工業など、より高い技能を必要とする分野で活躍できる人材を対象とし在留期間の上限がなく、更新も可能なため、将来的に永住権の取得や家族帯同も認められています

▶︎関連記事:特定技能とは?制度の概要や1号・2号の違い、対象分野について

技能実習とは

技能実習は、開発途上国の人材が日本の技能や知識を習得し、帰国後に母国の発展に活かすことを目的とした制度です。1993年に制度化され、現在では91職種168分野に拡大しています。就労期間は最長5年で、基本的には転職は認められていません。

なお、技能実習には1号、2号、3号の3段階があり、原則として1年目が1号、2〜3年目が2号、4〜5年目が3号にあたります。それぞれの段階で技能評価試験などに合格することで次の段階へ進むことができ、技能レベルの向上とともに在留期間の延長が可能です。

さらに、技能実習3号修了者や優良な監理団体・実習実施者の下で実習を終えた人材については、一定の条件を満たせば特定技能1号への移行が可能です。これにより、より長期的かつ専門的なキャリア形成が日本で継続できるようになっています。

▶︎関連記事:技能実習生とは?制度の目的や概要受け入れ方法を解説
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特定技能と技能実習の9つの違い

ここからは、特定技能と技能実習の具体的な違いを9つの観点から比較していきます。制度を理解する上で大切なので、最後まで目を通してみてください。

比較項目特定技能技能実習
① 制度の目的即戦力として人手不足を補う労働力確保技術移転を通じた国際貢献・人材育成
② 業務範囲明確な職務定義あり専門性が高い技能習得が目的教育計画に基づく業務
③ 技能水準技能評価試験と日本語試験に合格が必要(実務重視)初級レベルからスタート段階的に試験をクリアしながらスキルアップ
④ 入国時試験技能試験+日本語試験(N4程度)が必須原則不要だが、在留継続には段階的に技能評価試験の合格が必要
⑤ 転職の可否同一分野内なら可能登録支援機関の支援あり原則不可問題があっても転職困難
⑥ 在留期間1号:最大5年2号:更新可・制限なし最大5年(1号→2号→3号と移行)延長は不可
⑦ 家族帯同1号:不可2号:配偶者・子の帯同可不可
⑧ 受け入れ方法企業と直接契約+登録支援機関の支援義務監理団体を介した間接的な受け入れ
⑨ 人数上限上限なし(分野ごとに調整はある)企業の常勤職員数により厳密に上限設定

①制度の目的

特定技能と技能実習のそれぞれの制度の目的は、以下の通りです。

在留資格主な目的
特定技能・日本国内の人手不足を補うための即戦力人材の受け入れ ・実務能力のある外国人労働者による業務遂行の強化・特定分野(建設・介護・外食など)の持続的な発展の支援
技能実習・開発途上国への技術移転を通じた国際貢献・外国人実習生の技術習得と母国での活用・日本と諸外国との国際的な連携・相互理解の促進

特定技能は日本国内の深刻な人手不足を補うことが主目的であり、即戦力として実際に業務に従事できる実務重視の人材の確保を目指した制度です。特に建設、介護、外食業など、慢性的な人手不足が深刻な分野では重要な位置づけとなっています。

一方、技能実習は開発途上国の若者が日本の優れた技術や知識を学び、母国に帰ってその技術を活かすことで国際貢献を果たすという理念のもとに作られた制度です。そのため、企業にとっては労働力というよりも教育の一環として受け入れる性質が強く、実際の業務内容も技能習得に重点が置かれています。

②職種や業務の範囲

特定技能の業務範囲は、基本的に即戦力としての実務能力が求められる内容となっており、単純労働に該当する業務ではなく、現場での技能活用が前提となっています。特定技能では職務内容の専門性が高く、業務範囲が詳細に定義されているため、企業は必要な技能人材を適切に配置しやすいという利点があります。

一方、技能実習の業務の範囲については、単純作業に見える業務であっても、技能として体系化されていることが前提となっており、教育計画に基づいて段階的にスキルを習得させる構造になっています。

ただし、あくまで「技能の移転と習得」が目的であり、即戦力としての就労を前提としたものではありません。

③技能水準

特定技能では、1号であっても分野ごとに設定された技能評価試験と日本語能力試験への合格が求められ、即戦力としての実務遂行能力が重視されます。試験内容は業務に即した実践的なもので、介護分野では介護技術の実演、外食分野では調理・接客の理解が問われるなど、実務レベルに直結しています。

特定技能2号では、さらに高度な技能水準が求められ、建設や造船といった業種において、現場のリーダーや熟練工レベルの知識と経験が期待されます。

一方、技能実習は初級レベルからのスタートで、段階的に専門性を高めていく構成です。そのため、入国前の技能習得の必要はありません。

④入国時の試験

特定技能では、分野ごとに定められた技能評価試験と日本語試験(通常は日本語能力試験N4相当以上)に合格することが必須です。これにより、現場での実務をこなすために必要な知識や言語能力を客観的に証明することが求められています。

一方、技能実習では入国前に技能試験の合格は求められず、受け入れ先企業による面接や日本語の初歩的な研修が中心です。ただし、入国後に技能実習1号から2号へ移行する際などには、技能評価試験(実技・筆記)に合格する必要があります。

⑤転職の可否

特定技能1号では、同一分野内での転職が原則として認められており、外国人本人の意思や企業側の都合に応じて転職先を変更することが可能です。この柔軟性は、外国人労働者の就労継続率やモチベーション維持にもつながる重要な要素です。

一方、技能実習制度では、実習先の企業との間に設けられた実習計画に基づいて技能を習得することが前提となるため、原則として転職は認められていません。仮に労働環境に重大な問題(パワハラ・賃金未払い・違法残業など)があったとしても、監理団体の判断と入管当局の承認がなければ転籍は困難です。

この点は、実習生の権利保護の観点からも制度的な課題とされており、今後の見直しが議論されています。

⑥在留期間

特定技能1号は、分野によって異なるものの、通算で最長5年間の在留が可能であり、就労ビザとしての自由度も比較的高いのが特徴です。ただし、1号のままでは在留期間の更新はできても、5年を超えての在留は認められていません。

特定技能2号では、在留期限の上限が撤廃されており、必要に応じて何度でも更新が可能です。さらに、2号は配偶者や子どもの帯同、さらには将来的な永住申請の対象にもなるため、長期的なキャリア形成に適しています。

▶︎関連記事:特定技能の在留期間は何年?1号・2号の違いや期間更新の手順をわかりやすく解説

一方、技能実習制度は、原則として実習1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)を段階的に経て、最長で5年間の在留が可能です。ただし、この5年を超える延長は制度上想定されておらず、実習3号修了後は特定技能など別の在留資格に移行する必要があります。

⑦家族の帯同

特定技能2号では、配偶者や子どもといった家族の帯同が認められており、長期的な生活基盤を日本国内に築くことが可能です。これは2号が高度な技能を持つ人材に限定されているため、永住を視野に入れた受け入れも想定されているからです。

一方、特定技能1号では原則として家族帯同は認められておらず、単身での在留となります。

また、技能実習制度においては、実習期間中の配偶者・子どもとの帯同は一切認められていません。技能実習生は日本での技能修得後は帰国することが前提となっているため、生活基盤の構築や定住を目的とした制度とは位置づけが異なります。

⑧受け入れの方法

特定技能は、雇用主が外国人と直接雇用契約を結ぶことが原則であり、基本的には企業と外国人の2者間で就労関係が完結します。

その雇用関係を円滑に進めるための外部サポートとして登録支援機関が介入することもあり、その場合は希望する企業が委託することで生活支援や行政手続きの補助、日本語学習の支援などを担います。

▶︎関連記事:登録支援機関の委託にかかる費用は?内容や注意点、自社支援の方法も

一方、技能実習では、企業が直接雇用するのではなく、監理団体と呼ばれる第三者機関を介して実習生を受け入れる形が一般的です。監理団体は、実習生の選定や入国手続き、生活指導、実習先企業の監査や指導などを行い、制度の適正運用を担保する役割を果たします。

⑨受け入れ人数の上限

特定技能には人数制限が設けられておらず、企業の人材ニーズに応じた採用が可能です。

一方、技能実習では受け入れ企業の常勤職員数に応じて、下記のように受け入れ可能な技能実習生の人数に上限が設けられています。

常勤職員数最大受け入れ可能人数
30人以下3人
31〜40人4人
41〜50人5人
51〜100人6人
101〜200人10人
201〜300人15人
301人以上常勤職員総数の20分の1

初めて技能実習生を受け入れる企業は「技能実習生1人のみ」などの制限がかかるケースもあり、実績を積むことで段階的に受け入れ人数を増やすことが可能となる仕組みです。

このように、企業の規模や実績に応じて柔軟に調整されるものの、特定技能に比べると受け入れ人数に関しては厳しい制限がある点が特徴です。

特定技能外国人や技能実習生を受け入れる際の注意

両制度を活用する際は、制度の趣旨を理解し、それに即した運用を行うことが重要です。不適切な労働環境や待遇、過度な業務負担などがあると、外国人からの信頼を損ない、制度の存続にも影響を与えるリスクがあります。

まず、最低賃金法に基づき、外国人労働者に対しても都道府県ごとに定められた最低賃金以上の賃金を支払うことが義務付けられています。これは国籍を問わずすべての労働者に適用され、遵守していない場合は罰則の対象となります。

そのうえで、特に注意が必要なのが「同一労働同一賃金」の原則です。これは、外国人であっても日本人と同様の業務内容であれば、賃金や手当、労働時間、福利厚生などについて同等の待遇を受けるべきという考えに基づいています。企業は、外国人労働者の雇用条件が不当に低くならないよう、日本人との比較のうえで待遇の均衡を確保する必要があります。

これらを怠ると、労働局や入管当局からの指導・是正措置、最悪の場合は受け入れ停止といった行政処分に至る可能性もあるため、法令遵守と労働環境の整備は非常に重要です。

▶︎関連記事:外国人労働者の最低賃金は?注意したい点や平均賃金、税金との関係を解説
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まとめ

特定技能と技能実習は、目的や仕組みが大きく異なります。企業にとっては、単なる労働力確保にとどまらず、将来的な人材戦略の一環として、制度を活用する視点が求められます。

  • 特定技能:即戦力人材の確保に適した制度
  • 技能実習:人材育成や国際貢献を目的とした制度

どちらの制度を選ぶ場合でも、外国人にとって働きやすく、成長できる職場環境づくりが欠かせません。

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